鹿児島市の賃貸市場で今起こっていることとは?
建築中の新築マンションの打ち合わせの時のこと。
現場所長さんからこんな言葉が、
「いやー。型枠業者が掴まらなくて困ってるんですよ。」
型枠とは、鉄筋コンクリートの建物を作るための器となるもの。
構造上、最も大事なコンクリート部分となるので、型枠業者さんがいなければ、そもそも鉄筋コンクリートのマンションは建てられないのです。
なぜ、こんなことになっているかと言うと、
今は未曾有の賃貸マンション建設ラッシュ。相続税の増税と投資ブームが重なって、鹿児島市内には賃貸マンションの工事現場があちこちに見られます。
今、型枠業者さんはいくつもの現場を抱えて、大忙しなのです。
あなたの近所にも、賃貸マンション建設の現場がきっとあるはずです。
「こんなにたくさん建てて大丈夫?」
って思いませんか?
実は、三井住友信託銀行が最近こんなレポートを発表しました。
このレポートには賃貸経営を行っている方にとって、目を背けたくなる事実が記載されています。
場合によっては不快に思われるかもしれませんので、読み進められる場合はご注意ください。
エリア格差が拡大する賃貸住宅市場
上のグラフは2013年のデータを元に総務省が発表した『賃貸住宅の空家率』です。
左から空室率が高い都市が並んでいます。
鹿児島市は、どこにあるでしょう?なんと、2013年時点では全国でも8位という高入居率でした。(空室率 約16%)
確かに賃貸仲介をしていた頃、県外から転勤で来られる方から「鹿児島は家賃が思ったより高いし、物件も少ないですよね。」とよく言われていました。
ところが、最近は他の管理会社さんと話をしても、空室に困っているという声をよく聞きます。
この5年でいったい何が起こっているのでしょうか?
それは、急速な需給バランスの悪化です。
20歳代がどんどん減っている鹿児島市
目を背けたくなるような現実ですが、上の表を見てください。
残念ながら、鹿児島市は全国ワースト2位で20歳代人口が減っています。2013年から2016年の3年間で7.1%減です。20歳代といえば、賃貸市場では最も多い顧客層。
我が鹿児島が、全国で2番目に若者が減っている都市だったなんて思ってもいませんでした。なんだかとてもさびしい気持ちになりました。
(そう思いつつ、僕も大学卒業後、東京に就職したので早々と鹿児島を出て行ったうちの一人なのですが。。)
九州の玄関口、福岡市は全国トップ10入りの8位で3.3%減。ストロー現象といいますが、鹿児島市は、新幹線の全線開通でより身近になった福岡市に若者が吸い上げられているのですね。
一方、賃貸住宅の増加率では、鹿児島市は30%近く増加しています。
下のグラフにもある通り、鹿児島市の賃貸市場は、右下の「第4象限」エリア
「世帯数減少・貸家着工率増加」という最も需給ギャップのある厳しい環境の真っ只中にいます。
2013年には、全国トップ10入りするほど入居率の良かった鹿児島市ですが、来年2018年の結果がどのようになるのか大変気になる結果となりました。
これからの賃貸経営に必要なものとは?
このように、鹿児島市は来春にはまた新築マンションが続々と供給され、賃貸住宅の競争は激化することが予想されます。残念ながら空室率20%は現実のものとなりそうです。
でも、お客さんが減って、ライバルが増えるのだから、空室がずっと続いても仕方がないという訳にはいきません。
賃貸経営でできることは色々とあります。
他の業界では市場が飽和してきた場合、どうしているでしょうか?
洋服や家電製品・食料品など様々な業界でも当たり前に行われていること。
それは、『差別化』です。
需要を細分化して、様々なニーズを取り込もうと大量生産・大量消費から変化しているのではないでしょうか?
例えば、シャンプー業界。
男性専用の薄毛用シャンプー「スカルプD」や女性だと「エクストラダメージケア」など、よりターゲットを絞った商品がヒットしています。
賃貸業界でもターゲットを絞った物件が徐々に出てくるようになりました。
他にはないもの・他とはちょっと違うものが求められてきています。
極端な事例ですが、全国賃貸住宅新聞(2017.9.4号)にこんな記事が掲載されていました。
『4匹まで飼える猫共生物件完成』
ペット可の賃貸物件はそもそも少なく、またその多くは「小型犬1匹」です。
そんな中で4匹まで猫と暮らせる賃貸なんて正にオンリーワンですね。
もちろん、猫と暮らしても問題がないように傷つきにくい壁紙やキャットウォーク・専用トイレなどの設備投資も必要ではありますが・・。
この猫共生賃貸マンション、大変人気を博しており、過去の事例では入居待ちが出ているそうです。
この事例から学べることは、
『需要を見つけ出すこと』です。供給側の思考でいると、猫を飼われると室内の匂いや傷のほうが気になりますよね?なので、自然と供給が少なくなり、猫と暮らしたい人達が困っているということを見逃してしまいます。
顧客思考に立って、この需給ギャップを見つけ、こういった困っている人達を見つけることができれば、例え相場より高い賃料でも喜んで入居してくれるのではないでしょうか?
「〇〇専用」といった商品は、一般的な商品よりも値段が高いですよね。
先ほどのシャンプーもより高い価格になっています。(でも、効くんじゃないか?と思って買ってしまうんですねぇ)
事実、この事例では周辺相場より2,000円~3,000円高い家賃なのだそう。そして、他にこんな賃貸はないのですから、一度住んでくれたら、長い期間入居してくれるでしょう。
大変分かりやすい差別化戦略の好事例だと思います。
「そんな差別化にたくさんのお金は掛けられないよ。」
という声が聞こえてきそうですが、お金を掛けずにできる差別化もたくさんあります。その為に必要なのは、自身の物件の特性を知って、ライバルを知ることです。
その為には、元々備わっている潜在的なあなたの物件の強みを見つけ出すことが差別化への第一歩です。その方法とは、現在の入居者さんを知ることです。
一度、今住んでくれている入居者さんと向き合って、じっくり強みを探してみることをお勧めします。
●あなたの物件の強みを見つける方法はこちら
https://twinb.co.jp/page/vacancy/161
●三井住友信託銀行のレポートはこちら
http://www.smtb.jp/others/report/economy/65_3.pdf