僕が出会った優秀な営業マン
とある営業マンが当社の管理物件にお客様をご案内してくれた時のこと。
その営業マンは、お客様を物件のご案内中に電話をしてきてくださいました。
これは、その営業マンと僕との電話のやり取りです。
高村「お世話になります。〇〇不動産の高村(仮称)です。」
「今、お客さんをご案内中なんですが、よろしいですか?」
田中「ご案内ありがとうございます。どうされました?」
高村「お部屋を見ていただいてとっても気に入っていただいているのですが、家賃が予算からオーバーしていて・・。それで、家賃の相談をお願いできないかと・・・」
田中「申し訳ありませんが、家賃の値下げは難しいと思います。」
高村「やっぱり難しいですかぁ。これだけのリノベーション物件なんて他にはないですもんね。」
「ちなみにいくらくらい掛っているのですか?」
田中「60万円ほどです。」
高村「60万円も掛けてるんですか?どおりで綺麗なはずだ。」
田中「とても気に入ってくださっているんであれば、僕も何とかして差し上げたいのですが。」
高村「ありがとうございます。このお客さんなんですが、実は、今も賃貸にお住まいで住み替えのご希望なんです。」
「なので、初月の家賃を免除していただけたら、初期費用がとても楽になるのですが、いかがですか?」
田中「(うーん、と暫く考えて)それでしたら、大丈夫です。ぜひそれでお話いただけますか?」
高村「本当にいいんですか?ありがとうございます。喜んでいただけると思います。」
「また、ご連絡させていただきますね。」
と、こんなやり取りでした。
電話を切ったあと、僕は高村さんの事をとっても優秀な営業マンだなぁと感心してしまいました。
それは、高村さんがこの電話のやり取りで3つの仕事をしているからです。
1.顧客志向で仕事をしている
入居者さんは当然1000円でも安く住みたいですし、オーナーさんは1000円でも高く貸したい。
そもそも、お互いの利益が相反するわけです。
そして、賃貸の仲介手数料は、お部屋を借りるお客さんからいただきます。
なので、仲介営業マンはお客さんの利益の為に働くのが仕事なのではないでしょうか?
電話もせずに「ここは家賃の値下げは無理ですよ」というのと、
「電話して交渉してみます」というのとではお客さんの仲介営業マンへの信頼度は全く異なるでしょう。
彼は、お客さんの前でちゃんとお客さんの利益の為に仕事をしています。
「顧客志向をしっかり持っている」良い営業マンだと思います。
2.商品の価値を伝えている
一般のお客さんはお部屋をみて、どれだけ費用がかかっているかなんて分かりません。
彼は、このリノベーションの価値を僕を利用して上手にお客さんにも伝えてくれています。
「自分が気に入った部屋」=「60万円も内装に掛けた部屋」
ということを知れば、お客さんの物件に対する価値は自然と上がるでしょう。
そして、商品の価値を知れば知るほどお客さん自身の満足度も向上します。
また、オーナーから見ても、商品価値をしっかりお客様に伝えてくれるのはとてもありがたいことでもあります。
3.第3の案を引き出している
プロパティマネジメントの考え方は、家賃の減額は最終手段です。
何故なら、家賃の値下げは物件の資産価値が下落してしまうから。
-1000円×12ヶ月=-12,000円
-12,000円÷10%(期待利回り)=-120,000円
の物件価値の下落となってしまうのです。
なので、高村さんは第3の案として、初月家賃の免除(フリーレント)を僕から引き出しました。
物件価値を下げず、お客さんの為にもなる双方にとってメリットのある案です。
高村さんは一本の電話で、この3つの仕事をしていたのです。
結果はというと、
このお客さんは、大変喜んでこの物件に申込みをしてくださいました。
お客さんの信頼を得ながら、双方にとってのメリットを考えることのできる大変優秀な営業マンだと思います。
僕ら管理会社は、魅力的な商品を作って世の中に提供するのが仕事。
そして、賃貸仲介は、様々な商品からお客様にとって価値のある商品を選んであげるのが仕事。
管理会社としては、お客さんにその商品を価値をしっかり伝えてくれる営業マンは貴重ですね。
高村さんのような営業マンを味方につけるのも、管理会社の大切な仕事だなぁと改めて感じた出来事でした。