絶対に知っておきたい不動産投資の重要な考え方
とある二人の不動産投資家の話
とある二人の不動産投資家が、同じ時期にそれぞれ賃貸マンションを購入しました。
二人が購入した賃貸マンションはとても良く似ていました。
どちらも同じエリアに建つ1Kタイプの単身者向け、総戸数20戸の賃貸マンションです。
また、築年数も築5年と一緒でしたので、当然購入した価格もほぼ同じでした。
ただ、少し違うところもありました。
Aが購入した賃貸マンションは、毎年ほぼ入居率100%で運営されました。
空きが出ても、1ヶ月足らずで次の入居者が決まってしまうほどです。
一方、Bが購入した賃貸マンションは、もちろん満室になることもありますが、平均すると入居率は毎年95%程度でした。
20戸×5%=1戸、つまり1戸がいつも空室になっている計算です。
そして10年後、二人の投資家はそれぞれの賃貸マンションを売却することにしました。
エリアも築年数も戸数も、そして購入した時の価格も同じ、本当によく似た賃貸マンションでしたが、売却価格には大きな差が生まれました。
なんと、1000万円以上の差がついたのです。
もう片方が、急いで安売りしたわけではありません。
もう片方が、高値でうまく売り抜けることが出来たわけでもありません。
この二つのマンション、高く売れたのは、投資家Aが購入した入居率100%のマンションではなく、投資家Bが購入した入居率が95%の方のマンションでした。
なぜ、この二つの賃貸マンションの売却価格に、このような大きな差が生まれたのでしょう。
なぜ、入居率がいつも100%だったAのマンションの方が安かったのでしょう?
一体、この2つの賃貸マンションの違いは何だったのでしょうか?
それは、管理会社の違いでした。
投資家Aが依頼した管理会社は、とくかく満室にすることが管理会社の役割だと捉えていました。
なので、管理物件を1日も早く自社で決められるように、近隣の競合マンションのどこよりも家賃を下げて募集していたのです。
一方、投資家Bが依頼した管理会社は、プロパティマネジメント(PM)会社でした。
PM会社の役割は、資産価値を高めることです。オーナーに変わって、物件の価値を維持・向上させることが仕事です。
なので、近隣の競合マンションを調べ上げ、少しでも高い家賃で埋まるように募集していました。
場合によっては、家賃を下げない為に、投資家Bに追加の設備やリフォームの提案を行っていました。
この管理会社の運営方針の違いが売却価格の差となったのです。
売却価格は、Aが1億3500万円、Bは1億5000万円。その差は1500万円もの差となっていました。
IRVの法則とは?
この売却金額の差が生まれた原因は、実は家賃にありました。
不動産投資をするなら家賃と価格には密接な関係があることは、絶対に知っておかなくてはいけません。
この二人の投資家のマンション。
売却した時の平均家賃は、投資家Aのマンションは4.5万円、投資家Bのマンションは5.0万円になっていました。
では、家賃と価格の関係性について、紐解いていきましょう。
不動産投資の有名な方程式で、『IRVの法則』というものがあります。
I=Income(インカム・収入)
R=Rate(レイト・※利回り)※正確には還元率と言います。
V=Value(バリュー・価値)
この公式は、CPM®(米国公認不動産経営管理士)という不動産管理の資格カリキュラムにおいて、その基礎として最初に学びます。
収入・利回り・価値。
それぞれの頭文字をとったもので、この3つの関係性は以下のようになります。
①収入(I)=価値(V)×利回り(R)
②利回り(R)=収入(I)÷価値(V)
③価値(V)=収入(I)÷利回り(R)
これを投資家Aと投資家Bのマンションにそれぞれ当てはめてみましょう。
年間家賃収入(I)は、
A:4.5万円×20戸×12か月=1080万円
B:5.0万円×20戸×12か月=1200万円
となります。
そして、売却した時の利回り(R)はどちらも8%でした。
これをIRVの法則③を使って価値を出します。
A:1080万円÷8%=1億3500万円
B:1200万円÷8%=1億5000万円
と、これで売却価格(V)が導き出されます。
全く同じ利回りで売却されたのに、一部屋当たりの家賃が5千円違うだけで、売却価格には1500万円という大きな差が生まれたのです。
つまり、購入してから売却するまでの成約家賃の積み重ねが全体の投資効率に大きく影響するということなのです。
満室は目的ではない
入居率100%を目的としてきた投資家Aのマンション。
物件の価値の維持・向上を目的としてきた投資家Bのマンション。
売却価格の差で1500万円のもの差が生まれていました。
これは、保有期間中の入居率の差を差し引いても投資家Bのマンションの投資効率が良いです。
投資家Bのマンションは空室率5%なので、年間家賃1200万円×5%=空室損60万円です。
60万円×保有期間10年=トータル空室損600万円なので、
1500万円ー600万円=900万円の差が残ります。
不動産投資、賃貸経営を行う上で、部屋を満室にすることはとても大切です。
特に空室損は、経営を圧迫して体力を奪っていきます。
しかし、単に家賃を下げていくだけでは、投資家Aのマンションのように物件の価値(V)は大きく下がってしまいます。
また、投資家Aのマンションは家賃を下げることで、幸いにして入居率100%を維持できましたが、実際には、家賃の値下げだけでは物件の競争力が落ち、入居率も下がっていくことが一般的です。
不動産投資に限らず投資の主な目的は、資産を増やすこと。
そして、満室にすることは資産を増やすための手段であって目的ではないことを念頭に置いておかなくてはいけません。
あなたのマンションは周辺相場と比べて割安になっていませんか?
また、安易に管理会社からの家賃の値下げの提案を受けてはいませんか?
一度、今の管理会社に市場調査を依頼されてみることをお勧めします。
自身のマンションが適正賃料になっているかどうかを知ることは、将来の売却金額の適正化に繋がります。
当社でも市場調査レポート作成は承っておりますので、お気軽にご相談ください。