家賃設定のミスを減らす方法
とある部屋探しのエピソード
今年3月の異動シーズンの最中。
友人から賃貸の部屋探しを頼まれた時の話。
彼の希望のエリアで4室ほど空室のある物件を見つけました。
不動産会社専用の流通サイトで見つけた物件でした。
鹿児島市内の中心地にある10階建ての築7年ほどの賃貸マンション。
オートロック・EV付の全戸1LDKの物件です。
2階と4階に1室ずつ、そして8階に2室。
彼の希望はできるだけ上層階だったので、8階を紹介することに。
南向きが家賃66,000円
北向きが家賃61,000円
間取り・専有面積はほぼ一緒で、どちらも角部屋です。
僕は彼に、この物件の資料をメールで送ったあと電話を掛けました。
彼は開口一番
「資料ありがとな!場所が理想的だよ。間取りもいいよね。」
「値段は高いけど、北向きよりはやっぱり南向きがいいよなぁ。」
「8階だし場所も間取りも凄くいいから、この南向きの部屋にに決めようかな?」
と物件を実際に見てもいないのに決めようとするではありませんか。
僕は慌てて、
「時間を作って、必ず内見はして欲しい。」
とお願いしました。
彼は、
「でも、今のシーズンは早く決めないとなくなっちゃうんじゃないの?」
と抵抗したものの
「不動産は写真だけでは分からないから、絶対に見てから決めた方がいい。」
との再度の僕の願いに、しぶしぶ同意して翌日案内をする約束をしました。
そして、案内当日。
営業車で彼と現地近くのコインパーキングで降りて、
周辺のスーパーやコンビニなどを歩いて見て廻りながら現地へ到着。
「やっぱり、場所が最高だな!ここでいいんじゃない?」
と彼は部屋を見る前から上機嫌です。
そして、マンションに入って2人で8階の2室を内見することに。
彼が見ないで決めようとした南向きの部屋から案内しました。
玄関ドアを開けると、白いフローリングが綺麗で、玄関収納も充実しています。
「やっぱりいい物件じゃないか!」彼は、靴を乱暴に脱ぎ捨て、僕を置いてリビングに向いました。
(靴くらいちゃんと脱げよ)
と思いながら僕が玄関で靴を並べていた時、リビングから彼の大きな声が。
「なんじゃこりゃ!」
慌てて僕がリビングに行くと、
ベランダの前で唖然とする彼の姿が・・・
南側には、同じ10階建てのマンションが建っていたのです。
お日様の光は入ってはくるのですが、せっかくの上層階なのにこれでは。毎日壁を前に生活するようなもの。
僕は、にんまりと彼に
「だから絶対に見たほうがいいって言ったでしょ!」
と言ってやりました。
彼は落ち込みながらも、
「ほんとだな。申込しなくてよかったわ(汗)」
と僕の言った意味をようやく理解してくれたのです。
気を取り直して、北向きの部屋へ。
北向きに期待してなかった彼の前には、城山の緑と青空が美しい眺望が広がっていました。
城山ホテルやアミュラン(中央駅の観覧車)も見えて、夜景も期待ができます。
「全然こっちの方がいいやん!これで、61000円は安いわ!」
と驚いた彼。
その場で管理会社さんへ電話して、北向きの部屋を申し込むことになりました。
彼の上層階希望の理由は、「眺望の良さ」だったからでした。
賃貸ではよくある話
このエピソードを読んで、
「こんなケースは稀でしょう。」
と思ったあなた。
実は、こんなケースはたくさんあります。
例えば同じマンション内で、AとBの2つの空室があったとします。
●Aの方が広いのに、狭いBの方が家賃が高い。
●間取りは断然Aの方が使いやすいのに、Bと同じ家賃。
●6階のAと3階のBが、全く同じ間取りで家賃も同じ。
僕の友人のように、どれも「これだったら絶対Aだよね!」となるようなケースは多いのです。
鹿児島の偉大な企業家である稲盛和夫さんの名言に
「値決めは経営」
という言葉があります。
JALを再生した時、現場に値決めの重要性を理解させ、実際に現場に値決めをさせて、現場を経営に参加させることで社員の意識改善を行った話は有名です。
それほど値決めは重要なのですが、賃貸では往々にして友人のケースと同じことが起こっています。
なぜ、このようなことになってしまうのでしょうか?
スタッキングプランの作成のすすめ
このようなことが起こってしまう原因のひとつに、スタッキングプランを作っていないことが挙げられます。
スタッキングプランというのをご存知でしょうか?
スタッキングとは、「積み重ねること」の意味です。
新築分譲マンションとかで建物の形をした価格一覧表を見たことがあるかと思います。
これを「スタッキングプラン」といいます。部屋の箱が積み重なっていますよね?
これを作っていないので、退去した部屋の募集家賃を決める時に他の部屋とのバランスが崩れていってしまうのです。
逆にスタッキングプランを作成しておくと、視覚的に物件全体の値段のバランスを掴むことができます。
間取り・眺望・通風・日当たり・周辺建物の影響・嫌悪施設・道路の影響(騒音)・・などなど
このような家賃に差のつく要因を加味して価格設定をしていくことができるようになります。
そして、スタッキングプランを作成して値決めをするときに一番大切なのは、
「自分がお客さんの立場だったら迷ってしまうように値決めする」こと。
お客さんが「こっちの部屋もいいけど、この値段の差だったらこっちもいいなぁ」となるかどうか?
このちょっとしたプロセスを踏むことが、空室期間の短縮に繋がります。
友人が見ないで決めようとした南向きの部屋は、5月になった今も空室のままです。
もし、スタッキングプランを作成して、8階の部屋の値決めをもっと吟味していたら・・
例えば、
南向き 64000円
北向き 63000円
という値決めをしていたとしたらどうでしょう?
2部屋の合計家賃は同じですが、お日様の光を取るか、眺望を取るかで悩みませんか?
おそらく、彼は北向きの部屋が63000円でも借りたでしょう。
そして、南向きの部屋も65000円を切りますので、
ひょっとしたら、異動シーズンで決まっていたかもしれません。
あくまでも仮説に過ぎませんが、スタッキングプランを作成すると、このように価格設定のミスを防ぐことができるのです。価格設定のミスが減ると、空室期間の短縮に繋がります。
面倒かもしれませんが、1年に一度で良いので、あなたのマンションのスタッキングプランを作成してみることをお勧めします。きっと、スタッキングプランを作成して、お客さんの立場で見てみるとあなたのマンションの問題点が見えてくるはずです。
賃貸経営で重要な「家賃設定」、これは「比較すること」がとても重要です。
家賃設定の方法について、あなたがもっと詳しく知りたいと思うならこのセミナーがお勧めです。
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