大谷翔平から貨幣の時間的価値を学ぶ
大谷翔平、ロサンジェルスドジャースと10年総額7億ドルの契約
日本の至宝ともいえる大谷翔平が、名門ロサンゼルスドジャースと10年総額7億ドルというプロスポーツ史上最高金額での契約を行いました。
連日報道が賑わっていますが、彼の成し遂げてきた軌跡を見ると、ただただ凄いとしか言葉が出ませんね。
また、大谷からの提案でその7億ドルの支払方法についても、驚きの内容が発表されました。以下引用します。
”ドジャース入りで合意した大谷翔平投手の10年総額7億ドル(約1020億円)の契約詳細が明らかになった。米メディア「ジ・アスレチック」など複数の米メディアによると、年平均の年俸7000万ドル(約102億3000万円)のうち、6800万ドル(約99億4000万円)の支払いを延期。つまり実質、年俸200万ドル(約2億9000万円)で来季から2033年まで臨むという。”
これは、「自分の給料を全額繰り延べて、チームが競争に勝つチャンスを増やすのはどうでしょう?」という大谷の言葉が始まりだそうです。
6億8000万ドルの後払いはどのくらいのディスカウントに?
気が遠くなるほどの大きな金額にいまいち実感が湧きませんが、大谷の提案によって実際にどのくらいの差が生まれるのか、計算してみました。
10年間毎年7000万ドルを受け取った場合
まずは、10年間均等に毎年7000万ドルを受け取った場合。
計算時に注意しないといけないのは、1年目に受け取る7000万ドルと2年目に受け取る7000万ドルはその価値は同じではないということです。
なぜなら、今日受け取る7000万ドルは、銀行に預けたり投資したりして、1年後にはもっと増やすことができるから。
また、物価が上昇すると、同じ7000万ドルでも買えるものが少なくなるため、(7000万ドルもあれば何でも買えそうですが。。。)お金の価値は下がります。
つまり、お金は時間が経つにつれて、その価値が変動するのです。これを貨幣の時間的価値と言います。
ここでは、将来にわたって得られるお金の現在価値を計算するDCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)を用います。ここでの「現在価値」とは、将来のお金を今の価値に換算したものを指します。
今説明した「貨幣の時間的価値」の原則により、将来のお金は現在より価値が低いです。
そこで、将来のお金を「割引率」という数字を使って現在価値に変換します。割引率は、投資に対するリスクやお金の他の使用可能性を反映しています。
今のアメリカ国債利回りは約4%です。年4%の運用がアメリカでは安定してできる環境といえますので、割引率を4%として計算しました。
そうすると、10年総額7億ドルの契約の現在価値は、下記のグラフの通り『約5億6700万ドル』となりました。
これは7億ドルを10年間に分割することによって、今すぐ7億ドル受け取るより、その価値が1億3300万ドル下がったことを意味します。
(※単純化して計算していますので、実際とは異なります。)
当初10年200万ドル、その後10年6800万ドル受け取った場合は?
大谷が提案した内容は、年俸の97%(ほぼ全額)を10年後に先送りするというもの。
当初10年間は年200万ドルを受け取り、その後の10年間で年6800万ドルを受け取ることになります。
受取総額は当初と同じ7億ドルです。
(200万ドル×10年間)+(6800万ドル×10年間)=7億ドル
それを、時間的価値を割り引いて計算すると、その現在価値はなんと『約3億8800万ドル』、7億ドルの半分近くに下がります。
グラフにすると以下のようになります。
そして、通常の契約時との差額は、
5億6700万ドルー3億8800万ドル=1億7900万ドル
つまり、ドジャースは日本円にして約260億円も得をしたということ。
大谷翔平、太っ腹にもほどがありますね!
さらに、ドジャースが大谷に支払う給料は当初200万ドルで済むのですから、大谷効果での球団の売上アップによる投資効果は計り知れません。「17」のユニホームも既に史上最高の売上を記録している様子。
別の報道では、来年メジャーに挑戦する日本のエース山本由伸(オリックス)の市場価値が300億円前後になるとの予想が出ています。
大谷の提案によって、ドジャースが山本獲得に急浮上してきたとの報道もあり、『大谷&山本』のドジャース戦が観戦できるとするならば、こんな夢のような話はありません。
ドジャースが大谷の計らいによって余裕ができた約260億円によって、この夢が本当に実現してしまいそうです。
最終的に大谷が受け取る金額の総額は7億ドルに変わりはありませんが、ドジャースからすると支払方法の違いで『山本由伸』をも獲得できるくらいの違いが生まれるのです。
貨幣の時間的価値を体感できる良い事例ですね。
不動産投資にも大きな利点のあるDCF法
さて、大谷の契約の比較に使用したこのDCF法。
不動産投資においてDCF法(割引キャッシュフロー法)を用いることには、いくつかの大きな利点があります。
①収益性の分析:不動産投資の収益性を評価する際に、単に将来の収益を見るのではなく、その収益が現在どのくらいの価値があるのかを把握できます。これにより、他の投資機会と比較して、どの程度有利かを判断できるようになります。
②リスクの考慮:DCF法では、割引率を用いて将来のキャッシュフローを現在価値に変換します。この割引率は、投資のリスク度合いを反映しており、高リスクの投資では高い割引率が用いられます。これにより、リスクを考慮した投資判断が可能になります。
③長期的な視点:DCF法は長期的なキャッシュフローを考慮するため、単年度の収益だけでなく、投資の持続可能性や将来的な収益性に焦点を当てることができます。
④計画と戦略の策定:将来のキャッシュフローを予測することで、不動産の管理や改善に関する計画を立てやすくなり、より戦略的な投資判断を下すことが可能になります。
これらの利点により、不動産投資におけるDCF法の使用は、不動産オーナーにとってより賢明で情報に基づいた決定を下すのに役立ちます。
当社では、DCF法を使った管理改善計画の提案や投資提案を行っています。より正確に投資判断をしたい、安心して賃貸経営を行いたい等のご要望がありましたら、お気軽にご相談ください。