セールスとサービスのギャップ
僕がまだ20代の頃。
当時、僕は東京の分譲マンション販売会社で営業をしていました。
会社が代々木というのもあって、新宿までは一駅。
これは、上司・先輩と共に歌舞伎町に飲みに行ったときの話です。
その上司は、大学時代応援団の団長をしていたという経歴の持ち主です。
想像通り、仕事にはとても厳しい人でしたが、叱られてもどこか暖かくて
居心地が良かったのを良く覚えています。
居酒屋で食事をしてほろ酔いになった僕らは、「おう、次に行くぞ!」と
勢い良く店をでた上司のあとを追っていました。
どこに行くのか決まってるのかな?と思いつつ、上司に追いつくと、
客引きのお兄ちゃんの話を聞いているではありませんか。
さすが日本一の歓楽街。たくさんの客引きのお兄ちゃんたちが
あの手この手で営業活動?をしています。
ようやく、東京に慣れてきていた僕でしたが、まだ夜の飲み屋街では
上司・先輩のあとを金魚の糞のようについていくのがやっとでした。
「それじゃ、たけーよ。」と上司がお兄ちゃんに言っています。
「かわいい娘たくさんいますから。」と食い下がるお兄ちゃん、
どうやらキャバクラのようです。
「その値段じゃ、ダメダメ!」とそそくさと上司は歩いていってしまいました。
先輩と僕が上司をまた追いかけると、
「あっ、ちょっと!」とさっきのお兄さんが追いかけてきます。
しつこいなー!っと上司はちょっと、ふくれっつらで振り向きもせず歩いていきます。
すると、「何か落ちましたよ!」とお兄ちゃんの声。
上司が「えっ!」と後ろを振り返ると、
ニコニコしながらそのお兄ちゃんが「ほら、うちの店の値段が(笑)!」
このお兄ちゃんの起死回生の一発は、上司のツボに見事にはまりました!
大笑いした上司は「気に入ったよ。兄ちゃんの店に行こうじゃないか!」
とそのキャバクラへ行くことになったのです。
ところが、、、、
お店に入ると、確かに可愛いのですが、無愛想な女の子達。
「お仕事は接客業だよね?」
と聞いてしまいたくなります。当然、会話が弾むわけもなく、しかも、
「飲み物たのんでいいよね~。」とこちらがOKしていないにも関わらず、お酒を注文しています。
30分も立たないうちにいらだった上司は、「おい、別の店行くぞ!」
と立ち上がってしまいました。
そして、会計は!わずか30分で一人10,000円(驚)!
異常に高い女の子の飲み物代でした。
さすがに、店を決めた手前もあって半ば切れながらその場は、上司が全て払うことに。
上司は、「こんな店二度と来るか!」とぼったくりとまでは言えない
微妙な金額に反って腹が立っているようでした。
せっかく素晴らしい営業をしたお兄ちゃんの頑張りがあってもお店のサービスは最悪。
セールスと商品・サービスが一致していなければ、そのギャップでお客さんの怒りは倍増します。
あなたも一度や二度はこのような経験ってありますよね。
期待が大きければ大きいほど、てこの原理が働いてしまうのです。
僕は賃貸の管理をメインに独立をしました。
セールスする側ではなく、商品・サービスを提供する側です。
仲介会社の営業マンは、一生懸命物件をいくつも案内してくれて、
色々な提案をしてくれて、時には、
「値段が落ちましたよ!」なんてお客さんを楽しませて
(これは、できれば言って欲しくないですが・・・)、
契約までたどり着きます。
そして、お客さんは僕の上司のように「期待に胸を膨らませて」入居します。
賃貸仲介と賃貸管理は、鍵の引渡しを境にお客さんをバトンタッチするのです。
賃貸は、あのキャバクラのように嫌でもすぐに店を変える=物件を変えることはできません。
入居してすぐに、
「あー、こんなはずじゃなかった。」
ってお客さんが思ってしまっても、ある程度そういう思いをしながらも住み続けなければいけません。
というのは、一度住んでしまったら賃貸には短期解約違約金というものがあるからです。
一定期間(だいたいが1年)未満だとペナルティを取られる契約になっているのです。
実際に部屋を見て決めてもらうので、商品自体での大きな誤解は生まれないのでしょう。
ですが、不具合の対応や相談の対応など、管理サービスの部分は住んでみないと分かりません。
ちなみにあのキャバクラは、案の定、数ヶ月で別のキャバクラに変わっていました。
リピーター0なのでしょうから、当然と言えば当然です。
この業界、優秀な賃貸営業マンにはリピーターや紹介が多いです。
なので、僕の管理が悪ければ当然、そのお客さんを通して、その優秀な営業マンの耳に入るでしょう。
そうすると、その営業マンは次のお客さんに僕が管理している物件を積極的に紹介してくれるでしょうか?
誰だって、自分が担当したお客さんには満足して欲しいですよね。
セールスと商品・サービスは一体です。
「全てのビジネスはファンを作ることである。」という有名な言葉がありますが、
入居者さんは当然のこと、仲介の営業の方にもファンになってもらえるような管理を目指さないといけないな。
ふと、昔の上司とのエピソードを思い出して思ったことでした。