不動産投資分析の基本『キャッシュフローツリー』を理解する
キャッシュフローツリーって何?
「あなたの物件の利回りは何%ですか?」
この質問に対して、不動産オーナーのあなたなら「確か〇%で購入したはずだが・・・」と、購入した時の利回りを数字で答えられるでしょう。
それでは、「あなたの物件の昨年の営業利益率は何%でしたか?」
もしこの質問に答えられるなら、あなたは素晴らしい経営者です。
なぜならこの質問に答えるには、キャッシュフローツリーを理解する必要があるからです。
キャッシュフローツリーとは、上記のようにお金の流れを追った表のことです。
不動産投資において、実際に手元にいくらのキャッシュが残るのかを表します。
具体的には、年間収入から空室などのリスクや諸経費、ローン返済などを差し引いて算出します。
税務上の損益計算書と違ってキャッシュの手残りを表すことが目的なので、減価償却費が含まれず、ローン元金が含まれてきます。
下図のように、キャッシュフローツリーの流れを視覚的に捉えると全体の理解が深まります。
投資判断の重要なモノサシとなります。
英語表記がされているのに気づいたかと思いますが、このモノサシは世界共通のものですので、これが理解できると世界中の不動産が比較できることになります。
一つ一つの項目の意味や詳細については、別のコンテンツでも解説しますが、簡単に説明すると、以下の通りとなります。
総潜在収入…見込みの年間家賃収入
賃料差異…見込み家賃と契約家賃の差異
空室・未回収損…空室での機会損失と家賃滞納の損失
純賃貸収入…実際に稼いだ年間家賃収入
雑収入…アンテナ収入や自動販売機収入など
経費払戻し…定額水道料など
実効総収入…実際に物件が稼いだ全体の収入
運営費…水道光熱費・管理手数料・修繕費・固定資産税など
営業純利益…運営費を差し引いた純利益
年間負債支出…ローン年間返済額(元利合計)
税引前キャッシュフロー…所得税などを支払う前の手残り
色々な利益率が見えるようになる
このキャッシュフローツリーを作ることによって、様々な利益率をはじき出すことができるようになります。
例えば、巷で言う不動産表面利回りとは、総潜在収入を物件価格で割ったものです。
実質利回りは、NOIを物件価格で割ったものです。
ここで、不動産業界で言われている「利回り」は、実は「初年度の利益率」であることに気づいたでしょうか?
本来の「利回り」の意味は、投資金額に対する収益の割合のことをいいます。
この収益には「定期収入」だけでなく、投資商品を売却した場合に得られる「売却損益」も含みます。
「利回り」と「利益率」の違いは重要ですので、混同しないようにしてください。
【投資分析で使う利益率一覧】
□表面利回り 総潜在収入÷物件価格
□実質利回り 営業純利益÷物件価格
□総収益率 営業純利益÷物件価格+諸費用
□自己資金配当率 税引前CF÷自己資金
このような指標によって、投資した額に対してどのくらいのリターンがあるのか、その効率が見えるようになります。
不動産は、物件によって空室率も異なりますし、必要な修繕費や諸々の経費などコストもバラバラです。
一見すると表面利回りがとても高い物件に見えても、修繕費がかなり必要で、営業純利益ベースだと利益率は高くなかったなんてことが起きます。
また、営業純利益が取れていても銀行にローンの返済をすると、実は赤字だったなんてこともあります。
不動産投資を行う上では、最終的な税引前キャッシュフローがプラスになるのかどうか、そして、投資額に対して手残りがどのくらいあるのか、キャッシュフローツリーを作成して、投資判断を行えるようにすることが基本です。